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2020.02.17
ニューヨークで開催された国連気候行動サミットでの演説で、一躍世界の注目を浴びたグレタ・トゥーンベリさん。
わずか16歳の少女が、環境保護活動家として怒りの表情を浮かべながら、世界規模の気候変動について抗議演説を行ったのは記憶に新しい。その彼女がスウェーデン人であることをご存知の方も多いだろう。
物怖じせず世界に向けて自分の考えを発信する英語力は、やはりスウェーデンの教育が培ったものなのだろうか。スウェーデン大使館のヨハネス・アンドレアソン一等書記官はこう答える。
「スウェーデン人は英語力が高いことで知られています。私が子供の頃は、小学校3年生から英語が必修科目でしたが、もっと幼い頃から、日常的に英語に触れる環境が整っています。スウェーデンは、国土も人口もそれほど大きくない、小さな北国です。国の発展のためには、欧米各国との経済的・文化的交流は不可欠で、社内公用語が英語というグローバル企業も多いのです。そのような大人に囲まれて、幼少期から英語に身近に接しているので、あまり抵抗を感じず英語を学べるのでしょう」。
では、強い関心や信念を持って社会問題に取り組む姿勢についてはどうだろう。
「スウェーデンでは、課題解決能力や創造力を伸ばす教育に重点を置いています。私も小学生の頃、地球温暖化やゴミの問題についての授業を受けましたが、ただ知識として教わるだけでなく、どうすれば問題を解決できるのかといった、深く考える力を問われる授業でした」。
単なる知識の詰め込みではなく、提起された問題に対して確固とした自分の意見を持ち、その先の解決策まで見出すことを、子供の頃から教えられるのだ。
また、社会問題への関心は家庭でのコミュニケーションでも育まれる。
「家族で食卓を囲む時などに社会問題について話す機会も多いですよ。外国の紛争や環境問題も家族で語り合うことで、身近な問題として意識できるのではないでしょうか」。
最後にアンドレアソンさんが語ってくれた。
「今年も日本人がノーベル賞を受賞しましたが、日本の教育にも素晴らしい点はたくさんあります。教育システムは、その国の歴史的・文化的背景の影響を色濃く受けています。もちろん時代にあわせて改善する必要はありますが、全てを否定するのではなく、その国にあった教育システムを、常に模索していくことが大切なのではないでしょうか」。
スウェーデン発祥の「プロギング」をご存知だろうか。スウェーデン語で拾うを意味する「プロッカ(plocka)」と、「ジョギング」を組み合わせた造語で、ゴミを拾いながらジョギングするというもの。
環境と健康の両方に良いとして人気が高まり、今では世界中に広がっている。社会問題についての教育が盛んなスウェーデンの子供たちの中にも、プロギングを楽しんでいる子がいるが、ゴミの問題をより身近に感じさせることに一役買っているのかもしれない。
ここ数年、スウェーデンはイノベーション大国として世界から注目を集めている。それは課題解決力を高める教育に加え、多様性を認める教育が功を奏していると考えられている。
スウェーデンでは、小さい頃からステレオタイプの教育をしない。家庭では、男の子は青、女の子はピンクといった押し付けをせず、子供が好きなものを好きといえる文化が根付いている。
世界中の子供たちに(大人も?)大人気の「マインクラフト」。実はこれ、スウェーデン生まれのゲームなのだ。日本でも教育機関向けのMinecraft:EducationEditionを授業に導入している学校が見られるが、お膝元スウェーデンでも、カリキュラムに取り入れている学校がある。
ただ単にプログラミングを学ぶだけでなく、都市計画や環境問題、未来へ向けて計画を立てることなど、課題解決型の学習にも役立てているのだそう。
スウェーデン大使館
ヨハネス・アンドレアソン一等書記官
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