2022.08.13
2020.12.26
2021.11.09
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食育としての料理は、五感を刺激したり、非認知能力を伸ばすのに最適な教材だ。なぜなら短時間で「挑戦と失敗」を頻繁に繰り返す、非常に学びの多い体験だからだ。
料理には準備や調理、片づけなどたくさんの工程がある。その1つひとつが他では代えがたい作業であり、その中で育まれる集中力やコミュニケーション力、問題解決の力などは、まさに数値には表せない素晴らしい能力だ。
親子で料理を作るときのキーワードにしたいのは「失敗して当たり前」。料理の過程でうまくできなかったり、キッチンを汚してしまったり、お皿を割ってしまうのも当たり前。そこで怒られると子供の意欲や向上心は簡単にしぼんでしまうし、リスク回避のために割れない食器ばかりを使っていては注意力が身につかない。子供といえども、ある程度1人前として見守ることが大切なのだ。
「子供のトライアル&エラーを最後まで見守り、卵を割るのを失敗したら『かきたま汁に使ったら?』などリカバーの方法を提案し、会話しながらいろんな可能性を引き出してあげてください。
料理工程を全て子供がやる必要はなく、野菜を切るだけ、混ぜるだけ、食器を並べるだけ、片づけるだけでも十分です。こういった経験の積み重ねが子供の自信をつけるので各家庭のペースで取り組んでみてください」。(坂本さん)
そんな料理の中でも、朝食作りは特別な体験だと言う。坂本さんが活動するNPO法人Efy(エフィ)では、朝型の生活習慣を啓蒙する「朝塾」という取り組みを行っている。「早寝早起き朝ごはん」をスローガンに、未就学児や小学生と朝8時から一緒に勉強し、一緒に朝食を作って食べるというプログラムだ。
活動後には「早起きして勉強するようになったり、朝食作りを手伝ってくれた」「朝食を作ってくれ、こんな栄養があるよと説明してくれた」「朝の忙しい時間での大変さを子供が理解し、手伝いに積極的になった」など保護者からの反響があり、朝食作りならではの気づきや、自立心、他者への思いやりの気持ちなどの効果を実感したそうだ。
学校の勉強だけでは身につかない能力を養う朝食作り。まずは親子が楽しむイベントとして、気軽な気持ちでトライしてみたい。
子供と朝食づくり
4つのポイント
1.休日など時間と心に余裕のあるときに始める
休日などの時間や気持ちに余裕のあるときに始めるのがポイント。朝の忙しい中で親がイライラしてネガティブな言葉を投げかけてしまうことのないように気をつける。
2.“失敗して当たり前”の気持ちで
料理は普段の生活ではしない作業や、見たことのない道具を扱うことも多く、失敗したり汚れたりは当たり前。「子供と一緒に粉まみれになる」くらいの余裕で楽しもう。
3.年齢に合わせたステップアップを
目安として3歳頃からは「握る、むく、ちぎる、混ぜる」、5歳頃にはテーブルナイフや電子レンジを使った作業をしてみましょう。7歳頃には包丁や火を使う調理に挑戦を!
4.手伝うのはピンポイントでもOK
朝食作り全てに子供が参加するのはハードルが高いので、お手伝いはその中の1つでOK。本人のやる気などのタイミングを見計らい「やってみる?」と声かけしてみよう。
Step1 メニューを考える
まず親子で会話をしながら「おにぎり」「パン」などメニューを決めていく。幼児には「鮭のおにぎり」「たまご焼き」と、想像しやすいメニューを具体的に提案しよう。小学生になったら「朝に何を食べると1日中元気が出るのか」など簡単に栄養の話を織り交ぜると発展的な学びにも。前日や時間のあるときは紙にメニューの絵を描いてみるのもおすすめ。
● 創造力
● 動機づけ
● 目標解決の力
● 意欲
● 向上心 など
Step2 買い物をする
買い物は、普段食べている料理が何からできているかを知る大切な機会。まずは普段の買い物で会計までの流れを見せたり、家で店員さんとのやりとりを練習したり、「人参1本」「玉ねぎ2個」など買い物リストを作って準備を。スーパーでは食材を選び、レジに運んでお金の支払いの体験も大切だ。「ちゃんと後ろで見てるよ」と声をかけて子供の緊張をほぐすことも忘れずに。
● 想像力
● コミュニケーション力
● 対応力
● 思いやり など
Step3 作る
最初はおままごと感覚でもOK。野菜の皮をむく、卵をかき混ぜるなど、楽しいことやできる作業から始めよう。火を入れる前後の状態を見せることは想像する力を養い、味見は考える力や判断力、味覚を育んでくれる。デコレーションは子供が得意な作業なので「違う」「汚い」などは禁句! どんな仕上がりでもたくさん褒めることで自信をつけてあげたい。
● 創造力
● 想像力
● 対応力
● コミュニケーション力
● 忍耐力
● やり抜く力 など
Step4 食事の準備をする
無意識に大人がやってしまっているのが、食事の準備。実はここにも子供の能力を伸ばすきっかけは多い。「お茶碗は左、汁椀は右、お箸は左向き」「食器は丁寧に扱う」などのルールを理解させたり食器を並べたりすることで、物を丁寧に扱う力、自制心、達成感などが身につく。また量を考えながらごはんをよそう作業は案外難しく、相手のことを考える力や思いやる気持ちが育める。
● 思いやり
● コミュニケーション力
● 自制心
● 忍耐力 など
Step5 食べる
食事はコミュニケーション力を育む場。子供が作った朝ごはんは、ぜひ目の前で食べてたくさん褒めてあげよう! パパやママから褒めてもらう経験は達成感や自己肯定感を高め、「またお手伝いをしたい」という意欲や向上心にもつながる。好き嫌いがある子供には「ひと口だけ食べてみよう」と「ひと口ルール」を設けたり、親がおいしそうに食べる姿を見せることも大切だ。
● 達成感
● やりぬく力
● 意欲
● 向上心
● コミュニケーション力
● 目標解決の力 など
Step6 片づける
使った食器を自分で運んだり洗ったりする片づけは、子供の自制心を養う大切なルーティンの1つ。責任感や作業への達成感が生まれる。洗い物をする中で丁寧に食器を扱う運動能力・自己抑制力が身につくので、危険だからと敬遠しすぎず親が見守りながらチャレンジさせてあげよう。水や洗剤の適量、周囲を汚したら拭くなどのルールは事前に伝えておこう。
● 持続力
● 自制心
● 協調性
● 忍耐力 など
写真提供:NPO法人「Efy」
坂本星美さん
管理栄養士/料理研究家
1995年7月7日生まれ。NPO法人Efy(エフィ)代表理事として「朝塾」など地域の人たちと子供たちを食育でつなぐ活動を行う。アジアの最貧国「ネパール」で食育活動をしながら、スパイス・薬膳について研究し、商品開発も手がけている。現在は「料理のおねえさん」として、YouTubeでお料理エンタメ動画や「アニメめし」を再現した動画の配信にも注力している。
文:松永敦子
FQ Kids VOL.06(2021年春号)より転載
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