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小さい頃から運動が得意で、体を動かすことが大好きでした。8歳で陸上を始めるとどんどん夢中になっていき、中学校、高校では陸上部に入って陸上一筋。勉強は全くしませんでしたね(笑)。進路も陸上以外の道は考えられなかった。
僕はたまたま運が良く、プロ陸上選手として恵まれたキャリアを積ませてもらったけれど、自分が親になって考えると、ギャンブルな人生だなと思います。すべてを注ぎ込んで上を目指しても、オリンピックに行ける選手はほんの一握りですから。
スポーツ選手という職業は、心身ともに健康で、好きなことを仕事にでき、夢を叶えた充足感を感じられるやりがいのある仕事です。
ただ、その一方で、どっぷりと浸かるほど日本社会の一般的なキャリアとはかなり違う方向に進むというリスクもあります。仮に30歳までスポーツを続けたとして、そこから企業などでキャリアを積むにはまったく違うやり方でアプローチし直さないといけません。
我々の時代は、一流になるためには全部をかなぐり捨てる覚悟が必要というのがスポーツ界の常識でした。でも今は、科学の発展により、週に10時間以上練習してもあまり意味がないという認識も広まっています。
部活動の練習時間も週10時間が目安になってくると、勉強する時間がとれ、スポーツと学業の両輪で進むことができるようになります。そういう選手が増えていけば、スポーツ界におけるセカンドキャリア問題もなくなっていくはずです。
それに学業に取り組むことで選手としてプラスになることも多い。例えば、数学の論理的思考、英語や中国語などの語学を身につけることができればとても有利です。僕自身、ロジカルな思考が好きで研究職にも興味があるので、理系のリテラシーを高めておけばよかったとちょっぴり後悔もあります。大人になってからでも努力次第で取り返しはつきますが、土台があると全然違いますから。
今は明確な夢や目標がないという子でも、子供のうちに色々な経験をしながら「好き」と「嫌い」をたくさん集めておくといいと思います。そういう経験はきっと将来の道を選択する手助けになるはず。
5歳の息子との合言葉は、「やってみよう、やってみよう、やってみなきゃわからない」。自分でやってみて、自分で考えて、自分で理解する。そのサイクルを小さい頃から身につけて、将来は自分が思い描く人生を好きなように歩んでいってほしいと願っています。
為末 大(DAI TAMESUE)
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初めてメダルを獲得。3度のオリンピックに出場。男子400mハードルの日本記録保持者(2020年12月現在)。現在は人間理解のためのプラットフォーム為末大学(Tamesue Academy)の学長、アジアのアスリートを育成・支援する一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。
文:曽田夕紀子
FQ Kids VOL.05(2021年冬号)より転載
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