2020.08.11
2020.02.28
2022.07.14
―――お子さんとはアウトドアで過ごすことが多いですか?
照英さん(以下、照英):コロナ禍で思うように外出できないことも多いですが、元々はインドアよりアウトドアで過ごすことが多いですね。
キャンプやドライブ、旅行に行ったり、サイクリングがてらにランチを食べに行ったり、カヌーに乗るために富士五湖に行くこともあります。もちろん釣りにも行きます。長男の釣りデビューは2~3歳の頃だったと思います。
中山芳一先生(以下、中山):子供が小さいと、釣りに連れて行っても飽きてしまうこともあると思いますが、そんな時はどうされていますか?
照英:最初から海や川へ行って大人と同様のことをすると、確かに飽きてしまうかもしれませんね。わが家の場合は「釣り堀」で1時間ぐらい釣るところからスタートして、2時間、3時間と体験の時間を増やして慣れさせていきました。ピクニックみたいにお菓子を持って行くこともありましたが、釣った魚を家でさばいて食べると、「いつも食べているものよりおいしい! またこの魚を食べたいから行きたい」と言い出します。
さらにもう少し大きくなると、魚がかかった時の力強さを楽しめるようになってくる。そして自分の力で釣ったという達成感を得られれば、「もっと、もっと」となりますよね。「じゃあ、次はどんな魚を釣ってみたい? 今日釣った魚を図鑑で見てみよう」などと声をかけて、興味を広げるようにしています。
―――子供に自然体験に興味を持たせるのが難しい場合、どんな働きかけをしたらいいでしょうか?
中山:非認知能力を育てるために大切なのは、どの発達段階においても「興味」と「関心」。子供が興味を持つためには、きっかけづくりが必要なのです。照英さんのように子供とキャンプをして、釣りに連れて行って、カヌーに一緒に乗って……といろんな機会を作り、体験を増やすことがポイントになります。
さらに、強要しないことが重要です。興味を持てるものを探している間、黙って待つのは大変ですが、いろんなことを体験させてみて、「この子は、こういう事が好きなんだな」と親は見極めてあげられるといいですね。
照英:僕は感性で生きてきたので、方法を考えるよりも「これをしたい!」という気持ちが先にでて、すぐに行動しちゃう。
高校時代はずっと陸上に熱中していて、勉強もあまり好きではなかったから、大学に行きたいと言ったら、先生に無理だと言われたんですよね(笑)。でも、「なんで無理なんだろう」「どうやったら行けるんだろう」と自分で調べていくうちに、「NO」じゃない道を見つけたんです。
結果、大学に入ることができたので、どんなことも否定から入らず「どうしたらできるんだろう」を考えて突き進めば、夢は叶うんだと感じています。
中山:照英さんの場合、「優勝するぞ」とか、「進学するぞ」というイメージを作る能力に優れているんだと思います。自分の将来のイメージを作り出すことができる「軸」は、非認知能力といっても良いかもしれませんね。
子育てにおいてもイメージをつくり、段階を経て興味を持たせようという戦略をうまく立てているように思いますが、こうした能力は、ひとつの事に熱中する照英さん自身の経験から生まれているように思います。
照英:いつか誰かが「すごいね」と言ってくれると思えたら、それが新しいことに挑戦する勇気につながっているんだと思いますね。
中山:その通りです。だからこそ、大人には、「外でゴミを捨ててはいけません」「笑顔であいさつしなさい」と具体的な行動で子供に指示を出すだけではなく、大人自身が大切にしたい(大切にしている)価値観を子供に伝えてあげてほしいですね。
「こういう行動ができるのってカッコいいよね」「外でゴミを捨てるなんてカッコ悪いことだよね」「笑顔であいさつできると素敵だよね」といった自分の価値観を伝えるのが子育て。その中で、子供は自分の将来のイメージをつくっていくんだと思います。
―――釣り番組などでも活躍されている照英さんにとって、釣りから得た体験は子育てにどんな風に影響しているのでしょうか。
照英:釣りのプロの方にお会いする機会があったのですが、どんなに釣りが上手な人でも必ず魚が釣れる訳じゃない。じゃあアマチュアと何が違うのかと見ていたら、自然のことを非常にきちんと考えているんですよね。海の環境や魚の生態を学び、天候についても勉強している。釣りを通じて知識を培い、それに必要な条件を整えるために働きがけをしていて、奥が深いなと思いました。
釣りをしながら雲や風の動きを見て気圧を予想し、その場合の魚の動きも予測する。子供には、そうした経験から地球環境を含めたいろんな事を感じられる人間に成長してほしいと感じています。
中山:釣りといえば忍耐力や自制心が育つのかなと思いがちですが、釣り好きの方にそう言うと笑われてしまいました。釣りの経験から得られるのはそんなものじゃない。失敗を恐れない力や、新しいことに挑戦する気概、答えをひも解くワクワク感なんだって。これってまさしく非認知能力です。そして、そこからいろんな知識や考え方、技術を身につけていくんですよね。
ちなみに、親子で釣りに行った時にやってはいけないことってありますか?
照英:大事なのは、親よりも子供に先に釣ってもらうこと! 一番先に子供に釣らせて、それを思い切りほめてあげてください。親が子供より先に釣ってしまうと、子供が淋しい思いをしてしまいますよね。勉強の場合は親が先にやって見せてあげた方がいいんですよ。「パパすごい!」って尊敬しくれて、「僕も!」という気持ちになるから。
でも、どんなに上手な人でも釣れないかもしれない、これが釣り。「僕も!」が叶わない場合がある。だから子供にチャンスをあげて、横でおにぎり食べながら「サイコーだね!」と言ってあげるのが親の役割です。「うわー、すごい! こんなのパパも釣りたいな」と少し大げさにほめてあげると、それが子供の自信につながります。
―――釣りなど自然体験から得た、子育ての教訓はありますか?
照英:僕は、初めて子供が生まれた時、子供が憧れるような父親になりたいと思ってバイクの大型免許を取りました。
中山:子育てのために、バイクの免許ですか(笑)!
照英:父親が大型バイクに乗っていたらカッコいいかなって(笑)。一級船舶免許や食品衛生責任者の資格、愛犬飼育管理士の資格も取りました。こういった資格を持って、アウトドアや釣りをしていたら、常にいろんな事に興味を持って楽しんでいる父親に見えるかなと思って。
後は、何をすれば笑ってくれるのか、どうすれば気持ち良く過ごしてくれるんだろうと考えるようにしています。釣りは競争ではないから、子供が自分よりも先に釣れた姿をいつも嬉しがれる親でいたいですね。
中山:照英さんの子育てメソッドは、「寛容さ」がポイントですね。そして身体で感じることをすごく重視していますね。
現代はどうしても頭で処理することに重きを置きがちですが、だからこそ五感で感じる体験が大切。子供へ感じる機会を提供してあげることが、いろいろな非認知能力の育成にもつながります。
単に釣りをするだけでなく、そこから子育てや環境にも関連づけていける照英さんだからこそ、親子一緒に成長していけるのだと思いますね。
40年以上続くD.Y.F.C(ダイワヤングフィッシングクラブ)は、次代を担う子供たちと釣りを楽しみつつ、自然体験を通し「自分で考え、自分で工夫し、自分で動く」学びの場を提供している。
運営:DAIWA(グローブライド株式会社)
HP:www.daiwa-product.com/dyfc
照英
俳優、タレント。学生時代に関東学生選手権大会・槍投げで優勝の経験を持つ。その後モデルとして活躍し、『星獣船隊ギンガマン』でデビュー後は俳優としての活動をスタート。アウトドアの趣味も知られており、釣り番組やYouTubeでも活躍中。3児の父。
中山芳一
岡山大学教育推進機構准教授。専門は教育方法学。大学生のキャリア教育に加えて、幼児から小中高生、さらには大人に到るまでの非認知能力育成についても研究。
写真:松尾夏樹
文:藤城明子
Sponsored by グローブライド株式会社
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