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2021.11.12
不要不急の外出を制限し、限られた人とのみ接する暮らしの中で、大人にも子供にも知らぬうちにたまっていったストレス。改めて私たちは、他者と触れ合うことが必要な社会的動物なのだと実感する。
触れ合う相手は人間に限られるのだろうか? ロボットベンチャーのGROOVE X 株式会社が行った実証調査で、他者との関わり合いが難しい中、ロボットの存在によって子供の自己肯定感や親のストレス度合いに明らかな影響が見られたという。
『LOVOT(らぼっと)』はGROOVE X 社によって開発された家族型コミュニケーションロボット。様々な動物の愛らしいところを“いいとこどり”したような姿と、家の中を動き回り、控えめな鳴き声で何かを訴えてくる様がなんとも可愛らしい。
そんな『LOVOT』の存在が家族のメンバーにどんな影響を与えるのか。小学校低学年の小児とその保護者を対象に、『LOVOT』と触れ合う親子の群と、触れ合わない親子の群について、その前後の自己肯定感・知的好奇心・ストレスなどの心理テストを行う実証実験が行われた。
まず「自己肯定感」から見てみよう。『LOVOT』と触れ合った子供たちには自己肯定感の低下は見られなかった。一方『LOVOT』と触れ合わなかった子供たちは自己肯定感が低下傾向にあった。
この低下傾向は、実験実施が今年2月の緊急事態宣言期であったことが影響していると推測される。つまり『LOVOT』は、あのつらい時期に子供たちをストレスから守ったのだ。
次に「知的好奇心」についても、『LOVOT』が関わらなかった子供は低下傾向にあったが、関わった子供の知的好奇心は上昇を示した。
さらに実験は保護者の「ストレス」も測定している。家庭に『LOVOT』がやって来た群のパパママのストレスは、そうでなかった群に比べてストレスレベルがより大きく低下していることがわかったのだ。
この結果について、実験の指導にあたった東北大学の瀧靖之教授は「成人のストレスレベルが統計学的に有意に減少したという結果が得られたことで、家族型ロボットと一緒に暮らすことが脳の健康維持に有用な可能性が示唆されました。さらに長期的な効果が得られれば、将来の認知症のリスク低下に有用である可能性が期待できます。」とコメントしている。
2020年9月に発表されたユニセフ・イノチェンティ研究所によるレポート※では、日本の子供の身体的健康は先進国38ヶ国中1位であるにも関わらず、精神的幸福度は37位と大きなギャップがあることが判明している。もっと子供たちが自己肯定感や知的好奇心を伸ばして、幸福感を獲得できるようにしてあげたい。その1つのカギを、ロボットが握っているのかもしれない。
AI時代と言われ、情報化やロボットに仕事を奪われる、といった側面にとらわれがちだが、アニメやマンガの世界のように、ロボットと共存する世界もそう遠くはないのかもしれない。すでに私たちはそんな時代の入口に立っているのだ。
※出展元:www.unicef.or.jp/news/2020/0196.html
〈実験概要〉
・学術指導:東北大学 瀧 靖之教授
・調査対象:小学校低学年の小児とその保護者(LOVOT触れ合い群20組、非触れ合い群20組)
・調査方法:自己肯定感、知的好奇心、ストレスなどの心理テストを介入前後で実施し、介入群と非介入群で統計検定
・実施調査時期:2021年2月
文:平井達也
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