2020.05.07
2023.02.21
2022.07.06
子供たちの成長に応じて、どんどん増えていく新しいオモチャ。気に入ってよく遊んでいた思い出の品は親としても手放し難いが、すべて保管しておくわけにはいかない。壊れているのでなければ誰か新しい持ち主を見つけることができればいいが、それもなかなか容易ではない。
オモチャが断捨離の妨げになるとは……と悩むパパママに今、知ってほしいキャンペーンがある。コロナ禍で厳しい状況に置かれた海外の子供たちの未来のために、捨てようかと迷っているオモチャが役に立つのだ。
児童労働反対世界デーの6月12日から7月31日まで、国際協力NGO「シャプラニール=市民による海外協力の会」が、「おもちゃで児童労働をなくそう! キャンペーン」を展開している。
不要品を買い取り、全額を寄付するサービス「キモチと。」を提供するブックオフコーポレーション株式会社と共同で、不要になったオモチャやゲーム、小型調理家電などの再利用を通して、児童労働に従事させられている子供を支える取り組みだ。
協力するにはオモチャ類を段ボールなどに梱包して、キャンペーンサイトから「無料集荷の申し込み」をするだけだ。家にいながらにして、困難な状況にある子供たちの未来を拓く手助けができるのだ。
現在、世界で1億6000万人、子供の約10人に1人が児童労働に従事している。コロナ禍がもたらした失業・収入減はこの状況をより悪化させつつある。ユニセフと国際労働機関の共同報告書※では、「今食い止めなければ、児童労働に就く子供の数は2022年末にはさらに890万人増加する恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
※出典:ILO/UNICEF 共同報告書(www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_845567/lang–ja/index.htm)
2021年の児童労働撤廃国際年などを契機に、児童労働問題は人権問題として認識が深まりつつある。カカオ・チョコレートなどの食品産業、自動車・電子機器・レアメタルに代表される二次産業では業界団体が存在し、サプライチェーンが監視体制として機能している。
しかし、他人の家の家事を担う「家事使用人」として働く子供たちにはそうした目が届かず、その存在さえ知られにくい。「隠された児童労働」とも呼ばれ、性的虐待にも繋がりやすいため緊急性が高い。そんな家事使用人の子供たちが多く存在する国の1つがバングラディシュだ。33万人以上の少女が働いており、コロナ禍での学校閉鎖中に結婚させられた子供もいるという。
シャプラニールは、バングラディシュの支援センターを通じて、基本的な読み書きや計算・保健衛生などの教育支援を提供している。将来の就職選択肢を広げるためのミシン研修などの技術研修も実施。さらに親や雇用主、地域住民へ子供の権利に関するワークショップを通じた意識啓発、また2012年からは行政機関への政策提言活動(アドボカシー活動)も展開している。
「おもちゃで児童労働をなくそう! キャンペーン」はこうした支援活動に充てられる。期間中はゲーム機・ゲームソフト、本・コミック、CD・DVDの買取金額を10%増やし、全額を寄付として活用する。
例えば、オモチャ(フィギュア・ミニカー等)10個で、家事使用人として働く少女たちが読み書きを学ぶ授業1日の実施相当に。本・コミック20冊(約1,000円)では1ヶ月分の教材費分、ゲームソフト5本(約5,000円)ならミシン研修の1ヶ月開催分に相当するという。
子供本人に、遊ばなくなったオモチャを捨ててもいいかと聞いてみると拒否されてしまう、なんてことも。意志は尊重したいが、それでは永遠に片付かない。そんな時、自分が使っていた物が誰かの役に立つこと、誰かを支えられることを伝えてみたらどうだろう。わが子にとっての学びや、親子で世界情勢について話すきっかけにもなるかもしれない。
折しも戦禍の犠牲になる子供たちのニュースが伝えられている。世界にはあまりに辛い状況が残念ながら存在している。少しすっきりした家で、親子で勇気をもって世界の現実に向き合ってみることも必要ではないか。
文:平井達也
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