2020.09.05
2021.03.12
2021.01.13
《 今回の相談内容 》
子供のわがままが多く、矛盾することばかり言うのでとても疲れます。たとえば「お米とパンどっちが食べたい?」と聞いたら、「パン」と答えたのでパンを出したら「お米がよかった」と泣いたり、録画してあったある番組を見たいと言ったので見せると「違う! これじゃない!」と怒ったり……。どうしたらいいのか分かりません。
(ひろさん・3歳女の子の親)
わがままを言うのは、子供なりの理由と目的があり、大きく2つ考えられます。
1つは、「私が食べたいパンは、そのパンじゃない!」という単純な「大人と子供のイメージの相違」。
例えば、パンといっても、ロールパン、チョコパン、メロンパン、トースト……いろいろあります。実際、お子さんがどんなパンを望んでいたかまではわかりません。
子供は、メロンパンのあの味がいい! と思って「パン」と言ったけど、出てきたのがトーストだった。それならご飯のほうが良かったなぁと思う気持ちは、大人にも理解できますよね。
だから、わがまま、とひと口に言っても「互いのイメージの相違」というだけの場合もあるということです。
録画した番組の話も同じで、1つの番組でも色々なコーナーがありますよね。見たかったポイントはそこじゃないのかも、と想像してみるのも必要です。ただのわがままではなく、子供なりの正当な理由があるのかも? と考えてみるのです。
あとは、子供にこう言ったら、言った通りにやってくれるという「期待レベルのハードル」を下げることが大切です。ましてや3歳のお子さんですから、期待しすぎないほうがいいと思います。
保育園でも、先生たちが「はい、みんなー。お片付けするよ」と声がけしても、みんながやってくれるとは限りません。子供が「やりたい!」と言ったものではなく、大人が「やってほしい」と思っているものは、子供へ10回言って、1回やってくれたらラッキー。そのくらいの心構えでいた方が良いです。大人と同様に、子供にも考えや都合があるのですから。
もう1つ考えられる「子供の目的」というのは、親の目(心)が「よそに行っている」ので、親が困ること(わがまま)を言って、自分に注目させる目的です。
家事や仕事など、いつも親は忙しそうで、自分は放っておかれている気分になることもあります。「ちょっと寂しいなぁ」「もっとかまってほしいのに」「振り向かせるにはどうしたらいいのかな?」「よーし、わがままを言えば、自分のことを見てくれるぞ!」という思考を働かせるわけですね。
さっきはパン、今度はご飯、と駄々をこねることで、「親の目がこっちを向くのが嬉しい」ということです。とくに下にお子さんが生まれた後だったり、そういう可能性が考えられるなら、効果的な方法があります。
それは「スキンシップ」です。僕の場合、あくまでも子供から抱っこをせがまれたら、抱っこする、というスタンス。よほどの理由がない限り、自分からは抱っこしません。子供に求められたら、その時は必ず抱っこします。“保育士が必ず抱っこする”。そのくらい幼児期の子供に対するスキンシップは効果が高いということです。
抱っこをせがまれた時に、自分は必ず応えることができるか? と考えた時、「ちょっと自信ないかも……」と多くの親御さんは思われるでしょう。保育士も、子供の相手をすることから、書類や連絡帳を書く業務までいろいろあります。だけど、どんなに忙しくても、スキンシップは欠かさないようにしています。
どんなに忙しくてもスキンシップするコツ、それは朝・夕のスキンシップ。スキンシップによって生まれる通称・愛情ホルモン「オキシトシン」は、子供の安心感や幸福感に大きな影響を与えます。寝ている間と外で頑張っている間、特にこの2つの間は、親御さんとの意識的な接触がないため、オキシトシンの効果が薄くなります。
なので、起き抜けの朝と、保育園や幼稚園で頑張ってきた後の夕方、この2回に5分、いや3分でも構いませんので、ハグをしながらお話をしたり、お膝に子供を乗せながら絵本を読んだりしてみてください。そうすると、「オキシトシン」の効果によって、1日を通して子供の機嫌が良くなりやすく、精神的な不安も和らぎ、お悩みも解消に向かいやすくなると思います。
スキンシップは、「あなたをちゃんと見ているよ」と子供にわかりやすく伝える一番の方法。愛しているよ、大好きだよ、という気持ちを、お子さんにたくさん伝えてあげてくださいね。
てぃ先生
関東の保育園に勤める保育士。名前の読み方は「T」先生。Twitterフォロワー数は50万人、YouTubeチャンネル登録者は20万人を超える。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。近著の『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』は自身初となる育児本であり、こちらもベストセラーとなっている。現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子供への向き合い方などを発信中!
取材・構成:脇谷美佳子
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