2021.06.27
2024.06.07
2022.07.20
幼少期の子供たちはなぜあんなに虫が好きなのか。自分もかつては夢中になったのに、今はどうしてもダンゴムシが可愛いと思えないパパママは多いだろう。
特に夏は、カブトムシやクワガタをはじめ人気どころを目にでき、虫人気が高まるシーズン。セミの羽化も感動的だ。近所での虫取りもいいが、わが子の興味をさらに広げ、探求心を芽生えさせてあげたいパパママに、紹介したいイベントがある。
擬態する生物、特に昆虫は数多い。進化の結果、天敵から身を守ったり、餌となる生物に気づかれにくくなったりしたものだと考えられる。擬態は、その生物の生存のために欠かせない能力なのだ。
写真展「ダマして生き延びる 昆虫の擬態」は、昆虫写真の第一人者・海野和男(うんのかずお)氏が数十年に渡り世界各地で取材した昆虫写真を展示するものだ。
例えば、ピンク色の体で花に擬態するハナカマキリ。これだけ美しければ食べられる側もうっとりと見入ってしまうかもしれない。
逆に恐ろしいのはメダマヤママユだ。ガの一種だが、はねの模様がこちらを睨みつけるケモノの顔のよう。襲ったり食べたりする気が失せてしまいそうだ。
木の葉に化けて関心を向けられるのを避ける昆虫も、たくさんの種類がいる。
撮影した海野氏は1947年東京生まれ。東京農工大学の日高敏隆研究室で昆虫行動学を学んだのち、フリーの昆虫写真家に。写真家としての主なフィールドはアトリエのある長野県小諸市と、亜熱帯生物の宝庫・マレーシアだ。1994年には写真集『昆虫の擬態』で日本写真協会賞受賞。現在は日本自然科学写真協会会長を務めている。
写真展では海野氏が日本のほか世界各地で撮影してきた写真から33枚を選んで大型パネルで展示する。また、海野氏自身の編集・ナレーションによる動画も上映され、よりダイナミックな昆虫の擬態の世界に浸ることができる。さあ、あなたと子供は昆虫の擬態を見抜くことができるだろうか。
おそらく昆虫たちは、意識して策略を練って擬態を行っているわけではない。にもかかわらず見事に敵をあざむき生き延びるさまに、自然というシステムの深遠さを感じ取ることができるはずだ。わが子が自然や環境の神秘に関心を抱くきっかけになるかもしれない。
一方で、公益財団法人世界自然保護基金ジャパンによれば、IUCN(国際自然保護連合)が作成した絶滅のおそれのある野生生物リスト「レッドリスト」には、38,543種以上が記載されている。その原因の多くは人間によるものだ。偉大なる自然を守るためにできることを、親子で考える夏にもしてほしい。
〈写真展概要〉
海野和男昆虫写真展「ダマして生き延びる 昆虫の擬態」
・会期:2022年7月21日(木)~8月30日(火)まで
・会場:科学技術館 4階サイエンスギャラリーおよび5階イベントスペース
・時間:10:00~16:50(科学技術館への最終入館は16:00まで)
・休館日:会期中無休
・入場料:科学技術館の入館料のみ(入館には事前予約が必要です)
・主催:公益財団法人日本科学技術振興財団
・TEL:03-3212-8544(科学技術館)
文:平井達也
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